消耗品費と固定資産の違い|10万円・40万円の壁と少額減価償却資産の特例【2026年4月改正対応・経理経験者が解説】

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「このパソコン、経費で一括にできる?それとも固定資産?」——備品を買ったときのこの判断、金額の基準を正しく理解できていない方が本当に多いです。

しかも2026年4月から、少額減価償却資産の特例の上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。基準が変わったことを知らないままだと、本来その年の経費にできるものを固定資産として計上してしまうことになります。

私は会計事務所と事業会社の両方で経理に携わってきましたが、そもそもこの特例を知らずに損をしているケースや、セット購入の判定を間違えているケースをよく見てきました。本記事では経理実務経験者の視点から、消耗品費と固定資産の線引きを具体的に解説します。

※本記事は令和8年度税制改正(2026年3月成立)を反映した2026年7月時点の内容です。

まず押さえる:金額による処理の違い

備品などを購入したとき、取得価額(買った金額)によって会計処理が変わります。

取得価額処理方法
10万円未満全額その年の経費(消耗品費など)
10万円以上20万円未満一括償却資産(3年で均等償却)を選択できる
40万円未満少額減価償却資産の特例で全額経費にできる(要件あり)
40万円以上固定資産として通常の減価償却

※10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産とするか、少額減価償却資産の特例を使うかを選べます。

ポイントは、10万円以上になると原則は固定資産(減価償却)になるということ。そして、それを救済するのが「40万円未満の特例」です。

40万円が使えるのは「2026年4月1日以後に取得した資産」から

ここは間違えやすいので注意してください。上限が40万円未満になったのは、2026年(令和8年)4月1日以後に取得した資産からです。それより前に取得した資産は、従来どおり30万円未満が基準になります。

決算をまたいで過去の資産を見直すときは、「いつ取得したものか」で基準が変わる点を押さえておきましょう。

4つの区分の仕訳例

区分がわかっても、実際にどう仕訳するかで手が止まることがあります。代表的な形を並べておきます。

取得価額取得時の仕訳決算時の仕訳
10万円未満(借)消耗品費 /(貸)現金預金なし
10万円以上20万円未満
(一括償却資産)
(借)一括償却資産 /(貸)現金預金(借)減価償却費 /(貸)一括償却資産
※取得価額の3分の1
40万円未満
(特例を使う)
(借)工具器具備品 /(貸)現金預金(借)減価償却費 /(貸)工具器具備品
※全額
40万円以上(借)工具器具備品 /(貸)現金預金(借)減価償却費 /(貸)減価償却累計額
※耐用年数に応じた額

少額減価償却資産の特例を使う場合、上の表では「いったん資産に計上して、決算で全額を減価償却する」形にしています。実務では取得時に消耗品費などで費用処理してしまう会社もあり、どちらでも損金になる金額は同じです。

ただし、この特例を適用するには、申告書に所定の明細書を添付することが要件になります。会計処理の形だけで完結する話ではないので、処理の方法は顧問税理士と揃えておいてください。

なお、10万円未満のものを「消耗品費」で処理するか「事務用品費」などの科目にするかは、社内のルール次第です。金額の判定さえ間違えなければ、科目名の細かい違いが問題になることはあまりありません。大事なのは区分の判定の方です。

一括償却資産(20万円未満)という選択肢

表にあるとおり、10万円以上20万円未満のものには一括償却資産という選択肢もあります。取得価額を3年で均等に償却する方法で、耐用年数に関係なく3年で終わるのが特徴です。

40万円未満の特例が使えるなら、そちらで全額を経費にした方が早いように見えます。ただし一括償却資産にも利点があり、中小企業者等の要件や年間300万円の枠に左右されない点です。枠を使い切ってしまった年や、そもそも特例の要件を満たさない場合には、こちらが現実的な選択肢になります。

もう一つ、区分の選び方で見落とされやすいのが償却資産税(固定資産税の償却資産)との関係です。どの区分を選ぶかによって、申告の対象になるかどうかが変わることがあります。取得価額の区分だけで決めず、この点も含めて顧問税理士に確認してください。節税全体の考え方は中小企業の節税対策完全ガイドでも解説しています。

経理現場でよくある間違い

間違い1:特例そのものを知らない

実務で一番もったいないのがこれです。中小企業者等の少額減価償却資産の特例を使えば、取得価額40万円未満の資産を全額その年の経費にできます。

しかしこの特例を知らず、10万円以上のものをすべて固定資産として何年もかけて減価償却しているケースをよく見ます。本来なら一括で経費にできて節税できたはずが、機会を逃してしまっているのです。

この特例の主な要件

  • 青色申告をしていること
  • 中小企業者等であること(資本金1億円以下などの要件に加え、常時使用する従業員数の要件があり、改正で500人以下から400人以下に変更されています。大規模法人の子会社などは別途厳しい要件があります)
  • 取得価額が40万円未満であること(2026年4月1日以後の取得。それ以前は30万円未満)
  • 年間の合計額が300万円までであること

※この特例には適用期限があり、延長が繰り返されています。現在は2029年(令和11年)3月31日までの取得が対象です。改正の内容は財務省「令和8年度税制改正の大綱」で確認できます。なお、国税庁のタックスアンサー(No.5408)は本記事の執筆時点でまだ改正内容が反映されておらず、旧基準の30万円未満のまま掲載されています。参照する際は情報の基準日にご注意ください。

間違い2:セット(1単位)の判定ミス

金額の判定は「1単位」ごとに行います。ここがなかなか難しいポイントです。

たとえば、応接セットのテーブルと椅子は通常「1組(1セット)」で判定します。テーブル単体・椅子単体の金額ではなく、機能的に一体として使うものはまとめて判定するのが原則です。

「1台ずつなら10万円未満だから消耗品でいける」と思っても、セットで判定すると10万円を超えて固定資産になる——こうした判定ミスは現場でよく起こります。何をもって1単位とするかは判断が難しい場面もあるので、迷ったら慎重に確認しましょう。

経験者が注意している「300万円の上限」

特例を使ううえで、私が特に重要だと考えているのが年間300万円の上限です。上限額は今回の改正でも据え置かれています。

40万円未満の資産をいくつも購入した場合、特例で全額経費にできるのは合計300万円までです。これを超えた分は通常の減価償却になります。1件あたりの上限が上がった分、300万円の枠は以前より早く使い切る可能性があるので、これまで以上に枠の管理が重要になります。期末にまとめて備品を買うような場合は、この上限を意識して購入のタイミングを調整することも実務上は有効です。

10万円未満の資産との関係に注意

ここで誤解しやすいのが、10万円未満の資産との関係です。

  • 10万円未満の資産 → そもそも全額経費(消耗品費等)。300万円の枠にはカウントしない
  • 10万円以上40万円未満の資産 → 特例の対象。300万円の枠でカウントする

つまり、10万円未満のものは別枠で全額経費にできます。300万円の上限管理をするときは、「10万円以上40万円未満のもの」を対象にカウントすればよい、と整理しておくと混乱しません。

経験者が実務で必ず確認するポイント

備品購入の処理で、私が確認しているのは次の点です。

  • 取得価額が10万円・20万円・40万円のどの区分に入るか
  • セット(1単位)で判定すべきものではないか
  • 40万円未満なら、特例の年間300万円枠に余裕があるか
  • 付随費用(送料・設置費用など)も取得価額に含めて判定しているか
  • 取得した時期が2026年4月1日より前か後か(基準が30万円か40万円か変わる)

特に「付随費用」は見落としがちです。本体価格が9万円台でも、送料や設置費用を含めると10万円を超えることがあります。取得価額は本体だけでなく、使えるようにするまでにかかった費用を含めて判定するのが原則です。

線引きの管理にAIを活用する

備品の購入が増えてくると、300万円枠の管理や減価償却の計算が煩雑になります。クラウド会計ソフトを使えば、固定資産の登録・減価償却の計算・少額減価償却資産の管理を自動化できます。

判断に迷ったときは、ChatGPTなどのAIに「この備品は少額減価償却資産の特例の対象になりますか?」と論点を整理してもらうのも有効です。ただし、AIは改正前の古い基準(30万円)で回答することもあるため、金額の基準は必ず自分で確認してください。最終的な判断は必ず顧問税理士に確認することをおすすめします。

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まとめ

消耗品費と固定資産の線引きは、金額の基準と特例を正しく理解しているかで、節税効果も処理の正確さも大きく変わります。押さえるべきポイントは次の通りです。

  1. 10万円以上は原則固定資産。ただし40万円未満なら特例で全額経費にできる(要件あり)
  2. 40万円の基準は2026年4月1日以後に取得した資産から。それ以前は30万円未満
  3. 金額判定は「1単位(セット)」で行う
  4. 特例は年間300万円が上限(据え置き)。10万円未満の資産は枠にカウントしない
  5. 付随費用も含めて取得価額を判定する

「知っているかどうか」で差がつく分野です。日々の備品購入でも、一つひとつの判断が積み重なって決算の数字に効いてきます。特例を知らずに資産計上を続けていると、本来その期に落とせたはずの経費を何年もかけて償却することになり、資金繰りにも影響します。

迷ったときは、金額・単位・付随費用・取得時期の4点を確認する。これを習慣にしておけば、大きな判断ミスは防げます。なお、特例の適用要件や個別の判断に迷う場合は、最終的に顧問税理士に確認することをおすすめします。

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