経理の新人教育で最初に教えること|現役管理者が大切にしている4つの視点

経理の新人教育で最初に教えること 経理自動化

経理の新人や未経験者をどう育てるか——これは経理チームを預かる立場になると、必ず向き合うことになるテーマです。

私は現在、経理の管理者として社員の業務レビューや教育を担当しています。本記事では、実際に新人を教えてきた経験から、経理の新人教育で「最初に教えること」と、教えるうえで大切にしている視点をお伝えします。

簿記の知識と実務は「違う」と理解してもらう

経理に入社してくる社員は、簿記の資格を持っている人が多いです。基礎知識があるのは大きな強みですが、ここで最初に伝えるのは「資格試験で学んだことと実務には違う部分がある」ということです。

たとえば勘定科目の設定は、企業ごとにルールが異なる部分があります。試験では「正解」が一つでも、実務では会社の方針や過去の処理に合わせていく必要があります。簿記の知識をベースにしつつ、その会社のやり方に合わせて使いこなしていくこと——これを最初に理解してもらうことが、スムーズな立ち上がりにつながります。

基本中の基本:ミスはすぐ上長に報告する

スキル以前に、まず徹底して教えるのが「ミスや間違いに気づいたら、すぐに上長に報告する」という基本姿勢です。

経理の仕事は数字を扱うため、小さなミスが後の決算や申告に影響することがあります。間違いを隠したり、自己判断で処理を進めたりするのが一番危険です。「気づいたらすぐ報告する」を当たり前にしてもらうことで、早い段階で軌道修正でき、大きなトラブルを防げます。新人のうちにこの習慣をつけることが何より大切です。

領収書・レシートから「読み取る力」を育てる

教育で意識しているのが、暗記だけに頼らせないことです。その代表例が、領収書やレシートから様々なことを読み取れるようになるという視点です。

領収書には、日付・金額・店名・但し書きなど多くの情報が載っています。そこから「これは何のための支出か」「会議費か交際費か」「課税か非課税か」などを読み取れるようになることが、経理として一段成長するポイントです。

勘定科目を丸暗記するのではなく、「なぜその処理になるのか」を一枚の証憑から考えられるようになること。この読み取る力こそ、実務で本当に役立つ力だと考えています。

「一人前」と感じる基準は、数字の違和感に気づけること

では、どこまでできるようになれば一人前なのか。私の基準は明確です。

会計データの入力作業は、慣れてくれば誰でもできるようになります。本当に大事なのは、その先です。出来上がった数値を見て「この数字はどうなのか」「何か違和感がないか」に気づけるようになること——ここまで来ると、一人前になったと感じます。

たとえば「今月の経費がいつもより多い」「この科目の残高がおかしい」といった違和感に自分で気づけるかどうか。入力する人から、数字を読み解く人へ。この変化が、経理としての成長そのものだと思います。

AI時代だからこそ「数字を読む力」が重要になる

近年はクラウド会計ソフトやAIの進化で、入力や仕訳の多くが自動化されつつあります。だからこそ、これからの経理に求められるのは「入力できること」ではなく「出来上がった数字の意味を読み取り、違和感に気づく力」です。

新人教育でも、単純作業のスピードより、数字の背景を考える習慣を育てることがますます重要になっていくと感じています。AIに任せられる部分は任せ、人にしかできない「読み解く力」を伸ばす——これが今の時代の経理教育の方向性だと考えています。

独り立ちまでには2つの段階がある

新入社員として入ってきた人が、どこで「独り立ちした」と言えるのか。私の中では2段階あります。前述の「数字の違和感に気づける」がゴールですが、その手前にもう一つ、見逃せない段階があります。

段階1:イレギュラーに自分で気づいて、相談できる

定型の作業が手順どおりにできるようになるまでは、正直そこまで時間はかかりません。差が出るのはその次です。いつもと違う取引が来たときに、自分で「これはおかしい」と気づいて手を止められるか。ここが最初の分かれ目だと思っています。

指示されたことをこなすだけの段階では、イレギュラーもそのまま処理して先へ進んでしまいます。気づいて相談に来られるようになったら、任せられる範囲が一気に広がる。私はこの段階に入ったかどうかを、仕事を渡す基準にしています。

段階2:数字の違和感に気づける

これが前述の「一人前」の基準です。段階1が「目の前の1件」に気づく力だとすれば、段階2は「出来上がった全体」を見て気づく力です。見る対象が、伝票から数字の集合に変わる。ここまで来ると、こちらが確認する前に本人から「今月ここが変です」と言ってくるようになります。

教えるときに実際にやっている3つのこと

考え方を伝えるだけでは身につきません。手を動かす中で覚えてもらうために、私がやっていることを3つ挙げます。

1. 証憑は「答え合わせ」ではなく「考える材料」として渡す

領収書を渡すとき、正解の科目を先に言わないようにしています。先に答えを言うと、その1件は処理できても、次の似た取引で応用が効かないからです。

まず「この領収書から何が読み取れるか」を聞く。日付、金額、店名、但し書き、人数。そこから「何のための支出か」を本人に考えさせます。時間はかかりますが、この順番で教えた人の方が後で伸びます。判断に迷いやすい代表例は会議費と交際費の違いにまとめています。

2. 自分の処理を、後から説明させる

これが一番効きました。「なぜその科目にしたのか」を言葉にさせると、理解できていないところがはっきり出ます。

処理そのものは合っているのに、理由を聞くと「前もそうだったから」としか答えられないことがあります。それは覚えているだけで、分かってはいない。逆に多少間違っていても、理由が筋道立っている人はすぐ伸びます。正解かどうかより、説明できるかどうかを見ています。

3. 報告しやすい空気を作るのは、教える側の仕事

前述のとおり「ミスはすぐ報告する」を徹底してもらいますが、これは新人の心構えだけでは成立しません。報告したときに責められる経験を一度でもすると、次から隠すようになります。

私はミスの報告を受けたとき、まず対応を一緒に考えることにしています。原因の整理はそのあとで十分です。報告が早いほど傷が浅いことは、報告する側より受ける側の方がよく分かっているはずです。

教える側がやりがちな4つの失敗

最後に、自分の失敗も書いておきます。教える立場として私がやってきた、そして今も気をつけている失敗です。

1. 最初に情報を詰め込みすぎる

一番やりがちです。早く戦力になってほしいので、初日から全体像を説明したくなる。ですが受け取る側の器はそんなに大きくありません。詰め込んだ結果、何も残らないうえに「これ以上聞いてはいけない雰囲気」まで作ってしまいます。

今は最初の説明を意図的に削っています。必要になった時点で教える方が、結局は早く定着します。

2. 手順は教えるが、理由を教えていない

「この場合はこう処理して」と手順だけ渡せば、その通りには動けます。ただし少しでも条件が変わると止まります。理由を伝えていないので応用が効かないからです。手順を教えるときは、必ず「なぜそうするのか」を一言添える。ここを省くと、後から何倍も時間がかかります。

3. 任せきれず、自分でやってしまう

待っている時間より自分でやった方が早い——この誘惑が一番強い。特に締めの直前は、つい取り上げてしまいます。ですが取り上げた分だけ、その人が経験する機会は減ります。育たないのは本人のせいではなく、任せなかった側の問題です。私はこれを繰り返した自覚があります。

4. 「わかった?」で終わらせてしまう

新人は「はい」と答えるしかありません。これは確認ではなく、確認したつもりになるための質問です。今は「わかった?」の代わりに、説明させるか、実際にやらせるようにしています。前述の「後から説明させる」は、この反省から来ています。

あわせて読みたい

経理のキャリアや実務の考え方は、次の記事もあわせてご覧ください。

新人に簿記と実務の違いを伝えるとき、体系的に学べる場があると教育の負担はかなり減ります。実務のコツは現場で教えるとしても、基礎の部分は講座に任せた方が、教える側も教わる側も効率が良いと感じています。スキマ時間で進められるオンライン講座なら、業務の合間にも取り組みやすいはずです。

スキマ時間を有効活用できる【オンスク.JP】

まとめ

経理の新人教育で私が大切にしているのは、次の4つです。

  • 簿記の知識と実務は違う。会社のやり方に合わせて使いこなす意識を持ってもらう
  • ミスに気づいたらすぐ報告する、という基本姿勢を徹底する
  • 領収書・レシートから読み取る力を育て、暗記だけに頼らせない
  • 数字の違和感に気づけるようになることを「一人前」の基準にする

入力作業が自動化されていく時代だからこそ、数字を読み解く力を育てる教育が大切になります。これから経理の教育を担う方の参考になればうれしいです。

タイトルとURLをコピーしました