【2026年10月】106万円の壁が撤廃|会社の経理・総務がやるべき2つの準備

経理自動化

2026年10月、社会保険の加入要件から「賃金要件」が撤廃される予定です。いわゆる「106万円の壁」がなくなるということです。パートやアルバイトを雇っている会社では、経理・総務の実務対応が必要になります。

ただし、これは「扶養の壁がすべてなくなる」という話ではありません。誤解が広がりやすい改正なので、本記事では何が変わって何が変わらないのかを整理したうえで、会社側が今から準備しておくべきことを実務目線でお伝えします。

※本記事は2026年7月時点の情報です。制度の詳細は今後の政令・通達等で変わる可能性があります。

何が変わるのか:4つの要件のうち1つがなくなる

短時間労働者が社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入するかどうかは、現在4つの要件で判定されています。

  • 所定内賃金が月額8.8万円以上であること(賃金要件=いわゆる106万円の壁)
  • 週の所定労働時間が20時間以上であること(労働時間要件)
  • 勤め先が従業員51人以上の企業であること(企業規模要件)
  • 学生ではないこと

このうち、2026年10月に撤廃されるのは1つ目の賃金要件だけです。労働時間・企業規模・学生除外の3要件は残ります。

なお、企業規模要件の「従業員数」は厚生年金保険の被保険者数を基準に判定します。単純な在籍人数とは数え方が異なるため、自社が該当するかどうかの正確な判定は社会保険労務士に確認してください。

撤廃の理由は、最低賃金の上昇です。全都道府県で最低賃金が時給1,016円を超えたため、週20時間働けば自動的に月額8.8万円以上になります。つまり賃金要件が実質的に意味を持たなくなったため、要件から外す——という整理です。詳しくは厚生労働省のページで確認できます。

企業規模要件も段階的に下がっていく

あわせて押さえておきたいのが、企業規模要件が今後段階的に縮小・撤廃されていくことです。

時期対象となる企業規模
現在従業員51人以上
2027年10月から従業員36人以上
2029年10月から従業員21人以上
2032年10月から従業員11人以上
2035年10月から従業員10人以下も対象(規模要件の撤廃)

つまり2026年10月時点では、51人未満の会社はまだ強制適用の対象外です(労使の合意による任意加入は可能)。自社がいつから対象になるのかを、この表で確認しておいてください。「106万円の壁がなくなったから全社対象になる」という要約は誤りです。

「130万円の壁」は変わらない

ここが一番混同されやすいところです。今回撤廃されるのは106万円の壁であって、130万円の壁はそのまま残ります

  • 106万円の壁:一定規模以上の会社で週20時間以上働く人が、自分で社会保険に加入するかどうかの基準
  • 130万円の壁:配偶者などの扶養に入れるかどうかの基準(健康保険の被扶養者・国民年金第3号被保険者の認定)

この2つは別の制度です。従業員から「壁がなくなったと聞いた」と相談されたときに、どちらの話なのかを整理して説明できるようにしておくと、現場が混乱しません。

【経験者の本音】経理・総務が今から準備すべき2つのこと

私は総務部長として経理だけでなく人事・社会保険の実務も見ていますが、この改正で会社側がやるべきことは、突き詰めると2つです。10月になってから動くのでは間に合いません。

準備1:対象者の洗い出し(週20時間以上は誰か)

まずやるべきは、対象者のリストを作り直すことです。これまでは「年収106万円を超えるかどうか」で判定していましたが、今後は週の所定労働時間が20時間以上かどうかが基準になります。判定の軸が金額から時間に変わる、ということです。

ここで注意したいのは、週20時間は雇用契約上の所定労働時間で判断する点です。実際の勤務実績が繁忙期だけ増えるようなケースと、契約そのものが週20時間以上のケースは分けて考える必要があります。契約書ベースで一人ずつ確認していく地道な作業になりますが、ここを曖昧にすると加入漏れが起きます。

準備2:給与ソフト・給与計算の設定変更

もう一つが給与計算まわりの設定です。新たに加入対象となる従業員について、社会保険料の控除設定を追加し、資格取得届を提出する必要があります。対象者が一度に増えるので、10月の給与計算は例年より確認項目が多くなると見ておいた方がいいです。

使っている給与ソフトが改正にどう対応するかも、事前に確認しておきましょう。給与計算の効率化については給与計算を自動化する方法でも解説していますが、こうした制度改正のたびに設定変更が発生することを考えると、対応の早いソフトを選んでおく価値はあります。

なお、社会保険から控除する保険料は納付するまで預り金として管理します。この時期は預り金の残高がずれやすいので、月次でのチェックを忘れないようにしてください(立替金・仮払金・預り金・貸付金の違いで詳しく解説しています)。

実務で一番効いてくるのは人件費の増加

手続きの話とは別に、経営に効いてくるのが人件費コストの増加です。社会保険料は労使折半なので、加入者が増えればその分だけ会社負担分(法定福利費)が増えます

対象者が数人なら影響は限定的ですが、パート・アルバイトを多く抱える会社では、まとまった金額になります。予算を組む立場としては、この増加分を早めに試算して織り込んでおきたいところです。年度の途中(10月)から発生する点も、予算管理では見落としやすいポイントです。予算の組み方は中小企業の予算管理をAIで効率化する方法もあわせてご覧ください。

なお、保険料負担を軽減する支援措置(保険料調整制度)も設けられていますが、これは企業規模要件を満たさない会社が任意で加入する場合の措置です。すでに51人以上で、賃金要件の撤廃によって新たに加入対象者が増えるケースは対象外なので、混同しないよう注意してください。

あわせて読みたい

給与・経費まわりの実務については、次の記事でも解説しています。

まとめ

2026年10月の「106万円の壁」撤廃について整理します。

  • 撤廃されるのは賃金要件(月額8.8万円)だけ。週20時間・企業規模・学生除外の要件は残る
  • 企業規模要件は2027年10月以降、段階的に縮小(36人→21人→11人→2035年に撤廃)
  • 130万円の壁(扶養の基準)は今回変わらない。混同しないよう注意
  • 会社側の準備は「対象者の洗い出し」と「給与ソフトの設定変更」の2つ
  • 法定福利費(会社負担分)の増加を予算に織り込んでおく

判定の軸が「年収」から「労働時間」に変わる——これが今回の改正の本質です。対象者リストの作り直しから始めれば、10月に慌てずに済みます。

なお、社会保険の適用判定は個別の事情によって結論が変わることがあります。自社の対応方針や個別のケースについては、最終的に顧問の社会保険労務士(または税理士)に確認することをおすすめします。

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